異界を渡る物語 第一章 第二十話



 崩れかけの廃屋に、夜が訪れていました。灯りを点けず闇に任せたその場所は、ひどくひっそりとしていて、ひっきりなしの虫の声だけが辺りを包み込んでいました。
 仰向けに寝転がるルーウルアウドに、乙女は寄り添って足を絡めていました。
 しかし、添い寝する睦まじい男女のはずが、違和感を覚えることには、精悍な男の身体はぐったりしていて、投げ出された掌が上に向き、指も力なく緩んでいて、まるで死んでいるようでした。目を凝らしてやっと、腹の上下しているのが確認できるのでした。
「ラッダ……わたしのラッダ。愛しいひと。誰よりも。わたしの……」
 囁きのような、歌のような声が、時折、虫の音に交じって聞こえました。幼い子を寝かしつけようとする母親の唄にも似ていましたが、子守唄が持っているはずの幸福な匂いが、それにはありませんでした。
「ねえ……これから、どうしましょう……ずっと考えているのに、まだ答えが見つからないのです……人狩人とやらを滅ぼしてしまえば、解決するかしら?……それとも、要らないことは忘れてしまう?わたしには、それもできる……ああ、いっそ、ずっとこのまま寄り添って───いいえ、それでは、あなたに抱いてもらえない。でも、あなたを失うよりは、その方がいいのかもしれないわ」
 乙女の仕草は、一見すると飼い主に甘えて擦り寄る猫そのものでした。しかし、その声はあまりに弱弱しく、今にも消えてしまいそうに儚いのでした。
「どうしましょう、ラッダ……どうすれば一番良いの……」
 ルーウルアウドの指先が引きつるように動きましたが、気づいていないのか、構わないのか、乙女がそれを気にする様子はありませんでした。
「もう、わからないのです。わたしはただ、あなたと一緒にいたかっただけなのに、どうして上手くいかないのかしら……」
 乙女は横たわるルーウルアウドに絡み付いて、虚ろな独り言を繰り返しました。返事どころか瞼を開けることも許されない男を相手に、延々と語り続けました。
 ルーウルアウドはそれを、漂う意識で聞いていました。ルーウルアウドは波打ち際で弄ばれる小さな貝殻のように、岸に近づいたり、波に飲まれたりしていて、はっきりと己を感じる瞬間があるかと思うと、何も考えられなくなる、その繰り返しでした。例えるなら、ひどい眠気に襲われて耐えている状態にも近いものがありました。いったいどんな術なのか、身体を動かすために力を入れようとしても、指先を震わせるのがせいぜいでした。
 ルーウルアウドは、全力でもって、自由を取り戻そうとしていました。けれども、それは乙女のしている話が耳に入っているからではありませんでした。勿論それも心を動かしましたが、しかしながら、今はそれよりも重大な問題がありました。何かが、こちらへ向かっている───それも、善からぬものが。幾多の危険を潜り抜けてきたルーウルアウドの本能が、そう告げていました。
 一族について触れたとき、乙女は、毎回訪問を悟られることについて、風の精霊の声を聞いたからだと思っていた様子でしたが、実際のところ、それは少し違いました。表現の解釈の違いによる誤解でしたが、ルーウルアウドの言う「風の声を聴く」というのは、乙女のそれのように精霊の言葉として理解するのではなく、風によって「予感を得る」に近いものでした。それは風に限らず、自然のあらゆるものに起因していて、いわゆる虫の知らせ、予感、予覚、胸騒ぎなどと呼ばれるものを、もう少し強く、濃くしたような現象でした。
 今まさに、それがルーウルアウドに告げていました。何か、悪いことが起こる。その元凶になるものが、近づいている!
「ラッダ……わたしの……」
 乙女はもう、外界への興味を失っていました。ただ、深い憂鬱に囚われて、周りを見ようとしませんでした。
 己の身体を取り戻そうと必死になるルーウルアウドの耳が、何者かの足音を捉えました。意識のすべてがそこに集中しました。都人の忍び足だとしたなら上出来、しかし玄人のつもりならあまりに不出来なその足音は、もうすぐそこにきていました。まずい、とルーウルアウドは思いました。
「……だあれ?」
 乙女の声でした。果たして、その人物はこの場所にやってきたのでした。
 先ほどの予感は無視できないものの、暢気に誰何する暇があるあたり、差し迫って危険な相手ではないとわかり、ルーウルアウドは一先ず安堵しました。しかし、続く声に驚愕する羽目になったのでした。
「あなたは……まさか……あのときの娘なの?」
 ───それは、まるきり予想外のことでした。なぜそういう事態を計算に入れなかったのかと言えば、ひとつには、友でもあり兄とも慕う男への殆ど絶対的な信頼によるところであり、またひとつには、その男の姪に当たる少女について、些か評価を誤ったせいであると言わねばなりませんでした。
 鉛のように感じているだろう身体を引きずるようにして湖畔に辿り着いたのは───アシュオリに預けたはずのスファティだったのでした。
 もともと美しいとは言えない旅人の身なりを、さらにあちこち破ったり泥をこびりつけたり、ぼろぼろにして、崩れ欠けの出入り口に半分よりかかるように立ち、横たわるルーウルアウドと傍らで上体を起こした乙女を凝視していました。
 乙女がそれを異様な光景に感じたのは、ひとつには娘の顔がひどくやつれていて、目だけが爛々として見えたからでした。そしてもうひとつには、何とも説明できないけれども、どこか「普通でない」と直感的に思ったからでした。
 娘は目をふたりに釘付けにしたまま、一歩、また一歩、と近づきました。歩いたというよりも、身体が先に前へのめって、結果として足が前へ出たといった体でした。
「来ないで───いったい何です?何故ここへ?」
 乙女の口から出たとは思えないほど、聞いたことのない、冷たく平坦な口調でした。
 スファティはたたらを踏んでよろめきながらも、なんとか足を止めました。その間にも視線が逸らされることはありませんでした。
「ルー、兄さ、ん?……スクとエジ……」
「何のこと?」
「貴方は……光……光が……ぐっ!」
 光?と聞き返すより先に、スファティは苦しげに顔を歪めたかと思うと、頭を抱えて蹲りました。
「痛い……頭……たすけて……」
 乙女はそれを冷めた目で見つめていました。苦痛を訴える娘は見るからに辛そうで、確かに哀れみを誘いました。乙女がかつての乙女で、スファティが見知らぬ人の子であったなら、恐らく、一も二もなく助けたはずでした(それこそ、ルーウルアウドを助けた日のように!)。
 しかし、この娘の乙女の中での位置づけは、単なる人の子などではなく、「あのときの娘」だったのでした。ただでさえ陰鬱に蝕まれているというのに、ルーウルアウドに抱きついていた娘という、その記憶!心は冷え冷えとした荒野の沈黙に包まれました。
「光とは何です?あなたはどうしてここを突き止め、何をしにここへ来たの?わたしのラッダとは、どういう関係なのかしら」
 答えれば助けてやらぬこともない、と、言外に含ませていました。
「……光……、光が……。それを、目指して、光の……」
「?」
「それは、ルー兄さん、の、あいみょう……なの、ですか……?」
「あい……何ですって?」
 いまひとつ通じない会話に、乙女は苛立ちを覚えました。無風だった心が俄かに乱れました。
「さっきから何を言っているのか、まったくわからないわ!『ルー兄さん』というのは、ラッダのこと?あなたはラッダの妹なの?」
「妹……そう、だけど……違います、違う……あたしは、ルー兄さんを……ルー兄さん……」
 娘は身を縮めたまま、泣き出しました。殆ど呻き声に近い嗚咽でした。
 乙女にはそれが、どういうわけか、ひどく不愉快でした。
「わたしは、恋人です、ラッダの。───勘違いしているといけないから言っておきますけれど、あのときラッダが追っ手から守ると言ったのは、わたしのことで、あなたではないのですよ!ラッダが愛しているのは、このわたしだけなの!」
 乙女の知るところではありませんでしたが、ルーウルアウドが乙女の言う「あの夜」を正しく理解したのはこの時でした。実際のところ、ルーウルアウドは、あの場に乙女がいたことに気が付いていませんでした。なぜなら、乙女が男を訪ねる直前、その場所では追う者と追われる者との苛烈な命のやり取りが行われていたために、そんな場所に行こうとする乙女の身を案じた精霊たちが、乙女の意思に関わらずその存在を隠そうと働いてしまったのでした。従ってルーウルアウドの口から言われた言葉はそのままスファティへ向けられたもので、ただ、そこに乙女が邪推したような理由はなく、純粋に兄として妹へ向けた慈愛だったのでした。つまりこの件は乙女の思い込みによる完全な独り相撲にすぎなかったのでした。
 スファティは、のろのろと顔を上げました。涙が滂沱と流れていました。
「……なら、災いは……そんな……そんなこと」
 スファティは乙女の傍らで横たわるルーウルアウドに目を向けると、四つん這いでずるずるとそちらへ近寄りました。
「近寄らないでと言ったはずよ!」
 声を鋭くされて、伸ばしかけた手が、びくりと震えました。そして泣き濡れた顔で乙女を見ると、今度は反対に、乙女の方が些か怯みました。相変わらず目だけがぎょろりと、やけに力を持っていて、恐ろしいというよりも、気味が悪かったのでした。
 スファティは乙女を見上げて、お願いします、と呟きました。
「ルー兄さんの、縛を、解いて……」
 乙女はハッとしました。スファティは、ルーウルアウドが単に眠っているのでなく、神の業をもって縛られているのだということを、いま、当たり前のように看破しました。しかし、それは簡単なことではないはずでした。娘がルーウルアウドと同じ一族の者であるのは、例の出来事からも察することが出来ましたが、いくらルーウルアウドの言う「目」とやらを持っていたとしても、力を使った現場を見たならともかく、結果だけ見て原因を見破れる類のものではないはずでした。
「あなた、何故それがわかるの?」
 スファティは答えませんでした。というよりも、上手く答えられないといった様子でした。涙だけが依然流れ続けて、ぱた、ぱたと地面に落ちていました。
「───うっ!ぐ……エッ…ゲホッ!」
 スファティは突然背を丸めて、その場に嘔吐しました。
 乙女はハッと顔を歪めて腰を引きました。口から吐き出されたものを見て、顔を背けました。胃液の饐えた臭いに、袖で鼻と口元を覆いました。
 今までに味わったことのない、強烈なまでの嫌悪感でした。こんなにも醜悪で、嫌な、良い要素のひとつもない物を目の前で見たのは初めてでした。
 乙女は片手で口元を庇ったまま、もう片手で杖を出して、地を打ちました。ルーウルアウドの肉体を自由にしたのでした。
「ラッダ、こちらへ来て」
 その意図は、とにかく汚いものから離れて欲しい、それに尽きました。初めて見るぞっとする光景から遠ざかりたい、当然、愛しい男にも一緒にそうして欲しい、それだけでした。
 ところが、乙女の見たものは、乙女の望みとは全く逆のものでした。
「スファティ!」
「……!」
 自由を取り戻したルーウルアウドは、身体を起こすなり、乙女ではなく娘の名を呼んだのでした。
 そして、自分の荷物から水筒を取ると、蹲る娘の側に寄って、背を摩り、宥めて、口を濯がせました。
 ───乙女には信じられませんでした。到底、信じられませんでした。
「しっかりしろ。俺がわかるか?薬を使われたな……目覚ましが効くといいが」
 ルーウルアウドは懐から巾着を取り出し、その中に入っていた小さな粒を、スファティの口に含ませました。顎を支えるようにして、やや強引に噛み砕かせました。
 乙女は半分魂が抜けたようになりながら、その光景を、ただ、瞳に映していました。鏡が当たり前にものを映すように、ただ世界の規則に従って映していました。
 これはいったい、何なのだろう?廃屋に差し込む月光が照らしているのは、ルーウルアウドと自分ではなく、ルーウルアウドとあの娘。こちらへ来てと言ったのに、聞こえなかったのだろうか?
「ニル。これはスファティと言って、アシュオリの───覚えているか?あのアシュオリの姪に当たる。奴らに利用されたようだ」
「……利用……?」
 ルーウルアウドが娘の世話を焼きながら説明するところによれば、こうでした。曰く、人狩人が、一族の持つ力を無理に高める薬を娘に与え、他の仲間の居場所を察知させて道案内させようとしたが、娘は仲間よりも強い存在感を放つ乙女を見つけ、引きつけられるようにここまで来てしまった。
 しかし、そんなことより問題は、そう話している間にも、ルーウルアウドの目がスファティの方へ向いていることでした。
「……ラッダ。ねえ、こちらへ来て?」
 乙女は出来るだけ静かな口調で、先ほどと同じ台詞をもう一度繰り返しました。ルーウルアウドが自分よりスファティという娘を優先していることが嫌で、かなしくて、どうにも許せませんでした。
「少し待ってくれ。これに聞きたいことがある」
「………!」
 二度目の拒絶に、乙女は言葉を失いました。少なくとも乙女には、これは、拒絶と捉えられました。実際ルーウルアウドは変わらず娘の方を見ていて、嘔吐の跡に土をかけたり、服を汚したのを拭ってやったりしていました。
 唇を引き結んだ乙女の前で、ルーウルアウドは娘の名を呼び、頬を叩いて気づかせました。ゆるゆると顔を上げた娘が、ルー兄さん、と呼ぶと、安堵の表情を見せました。
「スファティ。オリはどうした」
 娘は問いに答えませんでした。額を押さえて少々沈黙して、それから反対に尋ねました。
「……スクとエジは?」
「スクティとエジクは、西の森で、俺が香り葉を噛ませた」
 香り場を噛ませるというのは一族の死の表現でした。理解せざるを得ない言葉ではっきりと伝えられ、スファティの瞳の色がさっと翳りました。両手がぶるぶると震えました。それでも泣き喚いたりせず、ぐっと奥歯に力を入れて耐えたのは、スファティのなけなしの自尊心がそうさせているに他なりませんでした。
「……オリ兄さんは、途中で、はぐれて……わからない。ミチュも。自分が逃げるだけで必死だった。多分、あたしを逃がしてくれたんだ。どうなったか、わからない……」
 スファティはゆっくりと項垂れて、両手で顔を覆いました。ルー兄さん、と絞り出すように名を呼んで、小刻みに肩を揺らしました。
 ルーウルアウドは両手で身体を叩いてやりながら、沈痛な面持ちで目を閉じました。それから、立ち上がって外の様子を窺い、乙女に向き直りました。
「ニル。ここは今、囲まれている」
 漸くルーウルアウドの目が乙女へと向けられました。しかし、乙女が何か言う前に、弾かれたように顔をあげたスファティが声を上げました。
「そんな!……あ、あたし。あたし、は、こんな───…」
 こんなつもりじゃなかった、あるいは、こんなことをしてしまうなんて、なのか、とにかくスファティは上手く喋れずに、哀れなくらい絶望的に顔を歪めました。そんなスファティの肩に手を置き、ルーウルアウドは首を振りました。
 それはほんの些細な、取るに足らないやり取りかも知れませんでした。しかし乙女には一連のすべてが、見せ付けられたように感じられて仕方ありませんでした。
「そんな顔をして……」
 腹の底で凝っていたものが、ごぽり、と音を立てたようでした。枯れた荒野だった心はいつの間にか、黒い沼と化していました。粘度のある汚泥から悪い気体が浮いて出て、大きな半球形の泡の最初のひとつが、いま、音を立てて弾けました。
「同情を買おうなんて、浅ましいわ」
 それは、ルーウルアウドは勿論、乙女本人も聞いたことのないような、乙女の声でした。少なくとも、麗しのウィシュ、と呼ぶことは躊躇われるだろう声音でした。
 ふたりはハッとして乙女を見ました。やや俯いた顔にかかる一筋の美しい髪ごしに、紫の瞳が暗く光っていました。
「言ったはずですよ。ラッダはわたしのものなの。何故、邪魔をするの?あなたは、とても不愉快だわ」
「邪魔?」
「そうです。わたしはラッダとふたりで居たいの───あなたは、邪魔よ」
 乙女はゆっくりと立ち上がり、居丈高にスファティを見下ろしました。
「ニル。お前を蔑ろにするつもりはなかった。気に障ったなら、謝ろう。だが、今は」
「どうしてあなたが謝るのですか!違うわ、その娘です!何故その娘を庇うの?わたしよりも、その娘が大事なのですか!」
 ただならぬ雰囲気を察して、乙女を宥めようと立ち上がったルーウルアウドでしたが、逆に癇癪を起こさせる結果になりました。
「落ち着け、ニル」
「どうして答えないの!」
 泣き出しそうに顔を歪めて愛しい男を責めた乙女は、その矛先を、やはりすぐにスファティへと向けました。
「あなたのせいよ……あなたのせいだわ!」
「ニル!」
 娘のほうへ身を乗り出した乙女は、ルーウルアウドの腕がしっかと身体に回されたことで、今にも飛び掛りそうだったのを寸でのところで阻まれました。
 それを見ていたスファティは、この嫉妬じみた、いかにも大人でない風に自分を批判してくる乙女に対して、こちらも段々と良くない感情を募らせることになりました。
「ルー兄さん。この……方は、地上人じゃあないんだね……掟を破ってまで、愛名を許して……そんなにまでするほどの人なの……?こんな人が……?あたし、わからない」
 辛うじて言葉を慎み、この人、でなく、この方、と言いましたが、二回目は口が滑りました。
 乙女が、また、ぎりっと眦を上げました。
「そう……それなら、見せてあげましょうか?わたしの力を。地の民に『こんな人』呼ばわりされる覚えはないわ!」
 言って、捕らえる腕から抜け出そうと、乱暴に身を捩りました。ルーウルアウドは力を強め、更に乙女の自由を奪いました。
「ニル、待て!何をするつもりだ」
「心配しないで、ラッダ。あなたには絶対に、傷ひとつつけません」
「ならば誰に傷をつけると」
「人狩人とやらです。あなたの敵を排除して、わたしの力も見せてあげます。一石二鳥でしょう?それでまだ納得しないというのなら、その娘にだって少しお灸を据えてあげても良いわ」
 ルーウルアウドは乙女の肩を掴んで揺さぶりました。
「なんということを……しっかりしろ、ニル!気を落ち着けて考えろ」
「(……どうして?)」
 今度こそ信じられないといった表情で、乙女は殆ど声にならない囁きを口にしました。その直後、腹の底から感情を爆発させました。
「あの娘は私を侮辱したのですよ!なのに、どうして!どうしてわたしが責められるの?どうして、何故、わたしばかり責めるの!」
 肩を掴む手を振りほどくと、拳を握って力任せにルーウルアウドの胸を叩きました。地団太を踏んで、いやいやをしました。
「ああ、ああ!どうしてなの!もう何もかも、わからない、ひどい、煩わしいわ!どうして、どうしてどうして!わたしは、あなたがすべてなのに、そうよ、もう、あなた以外、世界なんて───」










「───なくなってしまえば良いのだわ!」












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2011.03.10 公開