賢いオロエン 11



 誰がどんな気分で過ごそうと、いつでも律儀なのが時間というもので、オロエンの機嫌にはまるで感心もなく夜が来、また朝が来ました。
 オロエンはやっぱり一晩悩んで、彼女が来るかどうか、見に行くことに決めました。
 もう彼女は来ないかも知れません。
 もしかしたら来るかもわかりません。
 でも来たとしたって、またがっかりするのはわかっているのです。
 それでもオロエンは知らん振りしていられませんでした。
 見たらひどく辛いのは、すっかりわかっているけれど、見ないことには落ち着けないのです。
 二晩続けてまったく寝ていないオロエンは、幾分動きの鈍くなった身体でいつもの場所へ向かいました。
 しばらくすると彼女はやって来ました。
 そして昨日と同じくあちこち探す仕草をしたり、溜め息をついたりしました。
 オロエンは居た堪れなくなりました。
 辛くて辛くて、もう駄目だと思いました。
 今日はこれ以上彼女を見るのに耐えられない、お池の底でじっとしていようと思い、彼女が去るのを待たずに帰ろうとしました。
 するとどうでしょう。
 彼女が突然、膜を覗き込んだではありませんか。
 よく動く目を真ん丸くして、顔を近づけています。
 オロエンは驚きました。
 彼女は一体、何をしているものかと思いました。
 しかしそれはすぐにわかりました。
 彼女はオロエンを見ているのです。
 オロエンが動いたものだから、気がついてしまったのです。
 彼女が見ている!
 心臓が躍り上がりました。
 オロエンは焦り、動揺して、一目散にお池の底へと逃げました。



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2004.09.25 公開