賢いオロエン 12
逃げ帰って、岩陰に身を寄せると、考え事を始めました。
見られてしまった。
どうしたものか。
恐らく彼女は気がついてしまったのです、贈り物の主がオロエンだということに。
姿で一目瞭然ですから、気付かないわけがないのです。
オロエンがどんなに素早いつもりで動いても、もともと機敏に動くようには出来ていないのだから、彼女はしかと見たはずです。
ああ、彼女は自分のことを、ひどい男と思ったろうか。
馬鹿な男と思ったろうか。
オロエンは彼女の顔をよく見なかったことを後悔しました。
あの時、もう一瞬だけ止まって、彼女がどんな顔をしているものか見ていれば、こんなに苦悩はしないだろうに。
怒っていたって良いのです。
そうと知っているのなら、ほんの少しは気が楽です。
そういう理由で、オロエンは明日、もう一度だけ彼女に会うのを決めました。
この醜い身体を彼女の前に晒すのは、些か気が引けるとも思いましたが、もう決めたことでした。
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2004.09.25 公開