悪魔の王様 3
いわれるままについていくと、彼は大喝采で迎えられました。
暗闇の外は信じられないくらい白かったので、彼の目は何もかもぼんやりとしか見ることが出来ませんでした。
どうやら彼をここへと連れてきた「あれ」と同じようなものが沢山たくさん居るようだと、聞こえる声から彼は知ることができました。
小さなものが沢山いる広い場所で、彼とあれとの為に道が開けられ、そのまんなかを歩いているようでした。
あれがあんまり小さく、一度に進む幅が狭すぎるので、彼は辛抱強く小刻みに小刻みに気をつけながら歩かなくてはなりませんでした。
でも聞こえてくる声は彼と、彼を連れてきたあれとを多いに褒め称えていたので、悪い気分ではありませんでした。
「みんなどうして喜んでいるの」
「あなた様が我らの王様になったから、皆、嬉しいのですよ。さあさあ、こちらへ。階段の上へ」
広い場所の突き当たりについたのか、そこには階段がありました。
あれは階段といいましたが、彼は坂道だと思いました。
足は大きすぎ段は狭すぎるので、一段一段昇るのは億劫だし、何よりきちんと足元が見えなかったので、彼は段など特に気にせずに何気なくそこを上りました。
すると後ろから大きなどよめきが起こりました。
彼は驚いて、
「なあに。なにかあったの」
と尋ねました。
「いえいえ。あなた様の、偉大さに、皆、感心、したのです」
あれは後ろから、少し息切れしながら答えました。
どうやらこれはとても長い階段のようでした。
彼はうっかり追い越してしまったあれが来るのを待って、ふうん、と返事をしました。
よくわかりませんでした。
一番上までくると、あれに振り返るよう促されたので従いました。
大きな歓声が沸き起こりました。
充分にそれを聞いたあと、あれが二度ほど咳払いをすると、潮が引くようにざわめきは消えました。
そして静まったところで挨拶のようなものがはじまりました。
「諸君、今日は歓喜の日である。我々はながく、この日を待ち侘びた。充分過ぎるほどに待った。しかしついに、この日が訪れたのである。見よ!ここに、王は現れたぞ!」
今までで一番大きく声が上がりました。
あれは他にもいろいろと言っていましたが、よくわからなかったし飽きてしまったので、彼は全部が終わってあれに声をかけられるまでぼんやりと空想していました。
「挨拶が上手だね。みんな喜んでた」
「光栄です。そうでしょうとも、わたしも喜んでいます。あなた様が来てくださって。さ、さ、こちらにどうぞ。あなた様のための部屋がありますから」
彼はまた、あれに案内されるままに歩いていきました。
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2004.11.26 公開