悪魔の王様 4
それからしばらくの時が経ちました。
彼はだんだん、ここの暮らしに慣れてきました。
どうやらここは、眩しい時間と暗闇の時間が交互にやってくる決まりになっているのでした。
明るいうちはやっぱりぼんやりだけれど、暗くなれば少しだけ見えるようになりました。
しかしもともと暗闇の中でも、ものを見るより夢を見るほうが好きだし得意だったので、ここでも彼はそうしていました。
そんなある日、彼は随分とおなかが減っていることに気がつきました。
そう言えばここへ来てから一度も食事をしていませんでした。
あれが挨拶をしたあと、彼は彼のための部屋へ案内されて、それっきりあれとは会っていませんでした。
何も言われないので、彼は今まで暗闇のなかでそうしていたように、ずっと大好きな空想に耽っていました。
「僕は王様になったんじゃなかったっけな。王様ってこういうのが仕事なの。いいなあ、僕にぴったりみたい。でもそろそろおなかが空いたなあ、ここには食べ物がないから」
彼が独り言をいったとき、ちょうどそこへあれが現れました。
「ああ!やはりそうでしたか。ええ、そうでしょうとも。ちょうどよかった」
あれはどうも、うきうきとしているようでした。
「どうしたの。るんるんだね」
「それはもう。あなたのお食事の日取りが決まりましたから」
あれの声は本当に嬉しそうでした。
「へえ、いつ。僕、おなかが空いてるの」
「明日です。もう一晩の辛抱ですよ。明日にはおなかいっぱい、食べられますから」
「そうなの。楽しみだね」
彼はすぐにも食べたいと思いましたが、明日まで我慢することにしました。
「本当におなかいっぱい食べられますよ。食べ放題です」
それを聞いて、とても楽しみな気持ちになりました。
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2004.11.26 公開