悪魔の王様 11
「なかなか見つからないんですって」
ひとりは彼に言いました。
「わたしの友達は頑張って探しています。けれども、難しいようです。あなたはいったいどこから来たんでしょうね」
彼の足の上にちょこんと座ったまま、ひとりは溜め息をつきました。
「僕のいたのは素敵な真っ暗闇だよ。とても静かで、ひんやりしていて、素敵だよ。そうだ、真っ暗闇が見つかったら、君もおいで。本当に素敵だから」
彼がそう言うと、ひとりは少し笑って首を振りました。
「だめです。わたしは真っ暗闇の中では暮らせません」
「どうして」
「だって、真っ暗闇で暮らすように出来ていないんですから。暗くなったら眠るんですよ」
「そうだった。君は暗いと動かなくなるんだった。つまらないなあ」
「あら、それなら面白くして差し上げましょうか。そら、おなかに触りますよ」
ひとりは足から飛び降りる振りをしました。
「わあ!駄目だよ、それは面白くて笑うんじゃないよ、くすぐったいんだよ」
彼には、おなかの産毛に悪戯されると笑いが止まらない弱点がありましたが、最近それがばれてしまったので、たまにそうしてからかわれました。
彼は嫌だ嫌だと言いましたが、本当のところ、あんまり嫌ではありませんでした。
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2004.11.26 公開