悪魔の王様 13
それからしばらく経った日、友達が朗報を持ってきました。
彼の住処に丁度良い場所を見つけたというのです。
ひとりは大喜びで彼に言いました。
「見つかった、見つかりましたよ!これでもう、王様をやめられます」
「じゃあ、僕はどうなるの。ここを出て、そこへ行くの」
「そうです。良かったですね」
彼は、ひとりが嬉しそうに笑うのを見て、何か重たいものを飲み込んだような気持ちになりました。
「君は、僕の住処が見つかって、嬉しいの」
「もちろん嬉しいですよ。ずっと探していたんですから。あなただって嬉しいでしょう」
そう言われて、彼は何も答えられなくなりました。
「どうしたんです」
ひとりは、彼の様子がおかしいのに気がついて、いつものように足によじ登ろうとしました。
しかし、
「なんでもないよ。ほうっておいて」
と、彼が足を動かしたので、登れませんでした。
「ねえ、どうしたんですか」
ひとりはもう一度心配そうに尋ねましたが、彼は黙っていて、何も答えませんでした。
その日は、とうとう口をきかないまま、真っ暗闇になりました。
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2004.11.26 公開