悪魔の王様 14
彼は真っ暗闇の中、足の上で寝ているひとりを、じっと見ていました。
そして、ふと、ここのところ空想をしなくなったことに気がつきました。
以前はひとりが眠っている間、色々な空想をして楽しんでいたのに、最近はひとりをずっと眺めて過ごしたり、明るい間に話したことを思い出したり、また、ひとりがおはようを言ったら何と喋り始めようかと考えたりしていました。
空想をしようと思わなくなったし、空想をしようとしても、ひとりのことばかり浮かんでしまいました。
彼は慄きました。
空想が下手になってしまったと思いました。
こんな有り様で真っ暗闇へひとりで帰ったりしたら、いったいどうなるかと恐れました。
以前ひとりは、真っ暗闇には一緒に行かれないと言いました。
空想も出来ない、ひとりもいないとなれば、何もせず、真っ暗闇の中にただ居るしかないと思いました。
そう思い至って、彼は心から恐怖しました。
すぐにでもひとりを起こしたいのを必死になって我慢しました。
眠っている間はそうっとしておく約束だからでした。
彼はあんなに好きだった暗闇を、こんなもの早く終わればいいのにと思いました。
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2004.11.26 公開